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「散骨」の現状と課題

2018年10月11日

亡くなった方の葬送の方法として、「散骨」があります。

散骨とは、火葬した遺骨を細かく砕いて粉末にし、それを海や山などに撒くというものです。

日本でもかつては、遺体そのものを自然に返すという埋葬法は、特に珍しいことではありませんでした。

ただ、昭和23年にできた「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)において「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と規定されこと、また刑法190条(「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する」)の規定などもあって、いつしか散骨は違法行為というイメージが広がっていました。

それに対し、1991年(平成3年)に「葬送の自由をすすめる会」という市民団体が海での散骨(自然葬)を実施しました。

「遺灰を海・山にまく散灰は、それが節度ある方法で行われるならば法律に触れることはない」「私たちは先入感と慣わしに縛られて自ら葬送の自由を失っている」というのがその主張です。

国の見解を求めたマスコミに対して、厚生省(当時)は「墓埋法はもともと土葬を問題にしていて、遺灰を海や山にまくといった葬法は想定しておらず、対象外である。だからこの法律は自然葬を禁ずる規定ではない」、法務省は「葬送の一つとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪には当たらない」と回答。

これによって実質的に、国も散骨を認めることになったのです。

参考:「葬送の自由をすすめる会」ホームページ

http://www.shizensou-japan.org/

 

こうして散骨についての認知度は一気に高まり、2013年(平成25年)に行われた「墓地埋葬等に関する住民の意識調査」(厚生労働科学特別研究事業)では、散骨について「名前も方法も、両方知っている」は47.4%、「名前のみ知っている」は41%と、9割近くが知っている状況になっています。

しかし、実際に散骨を行うケースがどれだけあるかというと、意外に広まっていないようです。

ひとつは、散骨が一種のブームとなり、散骨ビジネスに参入する企業が増加。一部では乱暴なやり方で地域住民との摩擦を生み、地方自治体が条例やガイドラインで散骨を規制するケースも出てきています。

また、前述の意識調査では、自分が亡くなった際に散骨を希望する人の割合は、「すべての焼骨を散骨してしまってほしい」と「一部の焼骨だけを散骨してほしい」を合わせても、34.5%にとどまり、「遺族の判断に委ねる」という答えが42.4%に達します。

とはいえ、日本人の葬送や慰霊に対する価値観はどんどん多様化しています。自分の葬儀や葬送のスタイルについては自分で決めるという個人や、きちんとしたサービスを提供する事業者が増えていけば、「散骨」もやがて広く定着していくのではないかと思われます。

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