「宝石」が宝石である条件とは?
人間と宝石の関わりは太古の昔から現代にいたるまで、連綿と続いていますが、そもそも特定の鉱物を多くの人がなぜ「宝石」として認めるのでしょうか。
一般に「宝石」と認められるには、「美しさ」「稀少性」「耐久性」の3つが揃っていなければならないとされます。
まず、「美しさ」は主観的なものであり、どのような基準で判断するのかがもともと難しい条件です。
18世紀のドイツでは、美の問題を扱う「美学」が哲学の一分野として誕生しましたが、いまだに人によって美の定義は様々です。
しかし、4大宝石のうちルビー、サファイア、エメラルドをみると、ルビーは赤、サファイアは青、エメラルドは緑という色が大きな特徴であり、他の宝石も概ね色に特徴があります。
もうひとつのダイヤモンドはほぼ無色ですが、ダイヤモンドにしかない光の屈折と反射によって独特の輝きを放つ点で、一種の色の魅力があるといえるでしょう。
「宝石」の美しさという点では、他の鉱物にはない色や輝きが条件になっていることは間違いありません。
「稀少性」は、価値の高さにつながります。具体的には、産出量が限られており、世の中にそれほどたくさん流通していないことで、宝石には高い値段がつけられます。
これは近代経済学の父と呼ばれるアダム・スミスが取り上げた、「価値のパラドックス」の問題に通じます。
「価値のパラドクス」とは、水と宝石を比べた場合、水のほうがはるかに有用なのに、市場での取引では宝石よりずっと安いのはなぜなのか、という問題です。
アダム・スミスはこれを「限界効用」という考え方で説明しました。要は市場での需要に対して供給が少ない(希少な)ものほど、欲しがる人が多く、市場での取引価格が高くなるということです。
稀少性による価値の高さは、金やアンティークコイン、ヴィンテージワインなどにも共通しますが、宝石はまさに代表的な例といえるでしょう。
「耐久性」は、物質的な安定性のことです。わずかな衝撃で割れたり、傷がついたり、熱などで変色したりするようでは、耐久性があるとはいえません。
宝石の場合、耐久性については「硬度」と「靭性」の2つの目安があります。
「硬度」とは硬さのことで、宝石では特に表面に傷がつきにくいことを指します。この点でよく目安として使われるのが「モース硬度」です。
「モース硬度」は19世紀に考案された、屋外で鉱物を簡単に調べるための方法です。硬さ(1から10)に応じて標準物質が決められており、試料となる物質でこの標準物質をこすり、表面にひっかき傷ができるかどうかで硬さを測ります。
モース硬度 |
標準物質 |
硬さの程度 | ヌープ硬度(※) |
1 |
滑石 | 爪で簡単に傷をつけられる。 | 16-30 |
2 |
石膏 | 爪でなんとか傷をつけられる。 | 40-60 |
3 |
方解石 | 硬貨でこするとなんとか傷をつけられる。 | 110-140 |
4 |
蛍石 | ナイフの刃で簡単に傷をつけられる。 | 170-190 |
5 |
燐灰石 | ナイフでなんとか傷をつけられる。 | 420-500 |
6 |
正長石 | ナイフでは傷をつけられず、刃が傷む。 | 540-600 |
7 |
石英 | ガラスや鋼鉄などに傷をつけられる。 | 700-900 |
8 |
トパーズ | 石英に傷をつけられる。 | 1200-1500 |
9 |
コランダム | 石英やトパーズに傷をつけられる。 | 1600-2000 |
10 |
ダイヤモンド | コランダムに傷をつけられ、鉱物で最も硬い。 | 7000-8500 |
※工業材料などの硬さを表す硬度
「モース硬度」において、もっとも硬いとされているのがダイヤモンドです。工業材料などの硬さを正確に測定する「ヌープ硬度」でみると、ダイヤモンドの硬さは断トツであることが分かります。
なお、主な宝石のモース硬度は次のようになっています。モース硬度が7以下になると、傷がつきやすく、また少しずつ摩耗するので保管や手入れに注意が必要です。
モース硬度 | 宝石 |
10 | ダイヤモンド |
9 | サファイア、ルビー |
8.5 | アレキサンドラ、キャッツ・アイ |
8 | トパーズ |
7.5~8 | エメラルド、アクアマリン |
7~7.5 | ガーネット、トルマリン |
7 | アメジスト |
6.5~7 | 翡翠 |
5.5~6.5 | オパール |
5~6 | トルコ石 |
「硬度」が表面の傷つきにくさの目安であるのに対し、「靭性」は外部から加わった衝撃に対しての割れにくさを表します。
代表的な宝石についての衝撃試験では次のようになっています。
靭性 | 宝石 |
8 | ルビー、サファイヤ、翡翠 |
7.5 | ダイヤモンド、石英、アクアマリン |
6 | ペリドット |
5.5 | エメラルド |
5 | トパーズ、ムーンストーン |
3.5 | アパタイト |
これを見ると分かるように、表面の硬さでは断トツのダイヤモンドが、衝撃に対してはルビーやサファイアより割れやすくなっています。
これは、炭素の結晶であるダイヤモンドは、一定の面に沿って割れやすい性質があるからです。この性質を劈開性(へきかいせい)と言い、ダイヤモンドのカットはこの性質を利用しています。
昔からこうした3つの条件が重なり合って、「宝石」が宝石として広く認められているのです。
ご遺骨、遺灰からつくるメモリアルダイヤモンドについて
くわしくはライフジェムジャパンのホームページでご確認ください。