相続の新しいルール、知っていますか?(2) 「配偶者居住権」の利用を検討したいケース
約40年ぶりに相続法(民法相続篇)の大改正が行われ、2019年1月より順次施行されています。
その主な改正ポイントと内容、注意点などを取り上げます。今回は「配偶者居住権」の利用を検討したいケースについてです。
- 「配偶者居住権」により広がった遺産分割の選択肢
前回、説明したように「配偶者居住権」とは配偶者(特に夫に先立たたれた妻)が住み慣れた自宅に居住し続ける権利を認めるものです。
具体的には、短期居住権と長期居住権の2種類があり、いずれも被相続人が亡くなった時点で、配偶者が被相続人の所有する自宅に居住していることが前提になります。
短期居住権(正式には「配偶者短期居住権」)は、相続開始から最低でも6ヵ月はほぼ自動的に自宅に住み続けることができる権利です。
一方、長期居住権(正式には「配偶者居住権」)は基本的に、配偶者が亡くなるまでずっと自宅に住み続けたり、人に貸したりできる権利です。
長期居住権のほうが配偶者にとって有利ですが、権利が認められるためには相続人の間での遺産分割の合意、あるいは被相続人の遺言が必要です。
長期居住権は理論的には、自宅建物の所有権を居住権付き所有権と配偶者居住権の2つに分け、居住権付き所有権は配偶者以外の相続人が、配偶者居住権は配偶者が取得するということです。
長期居住権は特に、被相続人が残した遺産をどのように分割するかという点で、選択肢が広がったところに意味があるといえるでしょう。
- 子どものいない夫婦や子連れ再婚夫婦にとってのメリットとは?
では、具体的にどのようなケースでメリットがあるのでしょうか。
ひとつは、被相続人の遺産が不動産(特に自宅)に偏っているケースです。法定相続分の通りに遺産分割する場合、配偶者が不動産(自宅)を相続すると、老後の生活費にあてる現金等を相続できないことになりかねません。
そこで、配偶者は自宅建物について長期居住権だけ相続することにすれば、法定相続分で遺産分割しても、現金等を相続できる余地が広がります。
また、遺産が自宅だけしかない場合、遺言で自宅を配偶者に相続させても、他の相続人(兄弟姉妹は除く)には遺留分が認められており、後から遺留分侵害請求を起こされる可能性があります。そうなると、せっかく相続した自宅を売却しなければならないことにもなりかねません。
この場合も、自宅建物について配偶者が相続するのが長期居住権だけなら、遺留分の問題を避けることができるでしょう。
もうひとつ、メリットがあるのが子のいない夫婦や連れ子再婚夫婦のケースです。
子のいない夫婦の場合、どちらかが亡くなれば配偶者と自分の両親・祖父母、あるいは兄弟姉妹が相続人になりますが、遺言で配偶者に全財産を相続させることは可能です(ただし、自分の親には遺留分は残ります)。
問題はその先です。将来、配偶者が亡くなったとき、配偶者の家族構成にもよりますが、配偶者の兄弟姉妹やその子(姪や甥)などが相続人となると思われます。
それはそれでよいと考えるのであれば、問題ありません。
しかし、配偶者が生きている間は自宅に配偶者が暮らすのはよいとして、配偶者が亡くなった後は、自分の血族に所有権を渡したいと考える場合もあるでしょう。
そのときは、配偶者には自宅建物の長期居住権と現金等(老後の生活費として)を遺言で渡し、自宅の居住権付き所有権は自分の兄弟姉妹や甥、姪などに相続させるという方法が考えられます。
同じことは子連れで再婚した夫婦についても当てはまります。
被相続人の配偶者が自宅の所有権を相続した場合、配偶者が将来、亡くなるとその子に自宅の所有権が相続されます。被相続人に子がいても、養子縁組していなければ、配偶者の相続人になるわけではありません。
これも被相続人の考え次第であり、自分の相続をどう考えるかによります。
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