相続の新しいルール、知っていますか?(5) 「自筆証書遺言」の要件緩和と注意点
約40年ぶりに相続法(民法相続篇)の大改正が行われ、2019年1月より順次施行されています。
今回は「自筆証書遺言」の要件緩和と注意点について取り上げます。
- 一般的に使われるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」
日本でも近年、相続にあたって「遺言」を利用するケースが増えてきています。
後で説明しますが、「公正証書遺言」については、日本公証人連合会が毎年の作成件数を公表しており、平成30年には約11万件でした。
「自筆証書遺言」を作成したことのある人の割合は「公正証書遺言」とだいたい同じ程度といわれるので、毎年20万件以上の遺言が作成されているとみてよいでしょう。
「遺言」とは簡単にいえば、自分が亡くなった後、財産などを誰に、どのように相続させるかという意思表示を、生前のうちに行うことです。
民法の規定では、大きく分けて「普通方式」遺言と「特別方式」遺言があり、一般的には「普通方式」が用いられます。
さらに「普通方式」には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがありますが、よく用いられるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらかです。
「自筆証書遺言」はその名の通り、自分で作成する遺言です。いつでも、どんな紙にでも書くことができ、内容や遺言の有無を他人に知られず作成できます。
ただ、自分だけで作成すると内容や様式に不備があったり、発見されないままになったりする可能性があります。
一方、「公正証書遺言」は、各地にある公証役場で2人以上の証人の立会のもと、公証人に作成してもらうもので、原本は公証役場で保管されます。
形式の不備などで無効になることがなく、原本が公証役場で保管されるので紛失や偽造などの心配もありません。
ただし、証人は遺言の内容を知ることになりますし、作成には数万円ほど費用がかかります。
- 全て自筆が必要だったものが、一部はワープロや写しでもOKに
今回の民法改正では、「自筆証書遺言」について作成方式が一部、緩和されました。
「自筆証書遺言」は以前、遺言する人(遺言者)が遺言書の全文を自分で書き、押印する必要がありました。
全文とは、日付や氏名はもちろん、預貯金であれば金融機関の名称、支店名、口座種別、金額まで、不動産であれば登記上の所在地、種別、面積などまで含みます。
これらの一部でも遺言する本人以外の者が代筆したり、ワープロで作成した場合などは「自筆証書遺言」のすべてが無効になります。
しかし、実際には高齢の人にとって、全文をミスなく自筆することはそう簡単なことではありません。
間違いは後から訂正できますが、訂正についてもやり方が細かく定められていて、かなり面倒です。
そこで今回の改正では、財産目録に限って自筆でなくてもよいことになりました。
例えば、財産目録をパソコンのワープロソフト(Wordなど)で作成したり、不動産については不動産登記事項証明書を添付したり、預金については通帳の写しを添付したりすることが認められるようになったのです。
ただし、遺言の本文や日付、署名は自分で書かなければならず、全文をワープロで作成すると無効になってしまいます。
また、この改正は2019年1月13日以降に作成された「自筆証書遺言」から適用され、それ以前に作成された自筆証書遺言には適用されません。
あまり安易に考えず、「自筆証書遺言」であっても弁護士、司法書士など法律の専門家に相談しながら作成したほうが安全でしょう。
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