相続の新しいルール、知っていますか?(13) 「遺留分」の支払いは金銭が原則に
約40年ぶりに相続法(民法相続編)の大改正が行われ、2019年1月より順次施行されています。
前回に引き続き、「遺留分」制度の見直しについて紹介します。
法律改正で金銭の支払い請求が原則に
相続においては原則として、生前の遺言によって自分の死後、自分の財産をどのように処分するか自由に決めることができます。法律で定められた相続人だけでなく、赤の他人に自分の財産を渡すことも自由です。
しかし、民法(相続編)では、一定の範囲の相続人には、遺言があったとしても相続財産の一定部分を認める制度を設けています。これが「遺留分」です。
遺留分を侵害された相続人は、侵害した相手方に遺留分を支払うよう意思表示すれば法的な効果が発生します。
その効果は従来、「物権的効果」とされてきました。物権的効果とは簡単に言えば所有権が生じるということであり、不動産であれば共有になるということです。
「所有権が認められるならいいのでは」と思うかもしれませんが、話はそう簡単ではありません。実際には、遺留分の算定を巡って裁判になったり、財産の保全など別の手続きが必要になったりして、決着まで数年かかることも珍しくありません。
また、遺留分について決着がついても、不動産の場合は共有持ち分を市場で売却するのは難しく、そこでさらに不動産の分割請求訴訟を起こさなければならなかったりします。不動産の分割請求訴訟にはさらに数年かかり、不動産鑑定のための費用も負担しなければならなくなります。
このように従来の遺留分減殺請求は、手続き面でも費用負担の面でも、意外にハードルが高かったのです。
そこで今回の民法改正では、遺留分侵害額請求においては、金銭の支払い請求を原則とすることになりました。
遺留分侵害額請求を行うと、物権的効果が発生するのではなく、金銭債権が発生するということです。
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これによって、遺留分の争いの解決にかかる裁判など期間はある程度、短縮されることになるでしょう。
遺留分侵害額の計算方法も明確化
また、今回の民法改正では、遺留分侵害額の計算方法についても、次のように明確化された。
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従来の遺留分減殺請求では、不動産はいったん共有となり、その後、共有物の分割請求訴訟を行う必要がありました。その場合、不動産の価格は分割時点が基準とされたのです。
それに対して改正後は、相続開始時が基準となります。不動産の価格も相続開始時で固定されます。
相続開始時と、数年にわたる裁判の後で、不動産の価格がどのように変化しているかは立地等により一概にはいえませんが、遺留分権利者にとって、地価が下落傾向にあるような場合は、相続開始時で固定されたほうが有利です。
また、「遺留分算定の財産の価格」の計算において、相続人に対する生前贈与は原則として10年以内、第三者に対する生前贈与については1年以内に限定して、含めることになりました。
こちらは、遺言で法定相続分を超える遺産を引き継ぐ受遺者や受贈者に、不測の損害を与えないようにするものです。
相続において遺言の利用が増えるにつれて、「遺留分」の重要性も高まります。財産を渡すほうも、もらうほうも、「遺留分」についてはよく理解しておくべきでしょう。
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