お墓と弔いの歴史(2)埋葬という習慣はいつ、どこで始まったのか?
現在、お墓と弔いのあり方はどんどん多様化しています。
古今東西、様々なお墓と弔いの歴史について取り上げていくこのシリーズ。今回は、埋葬の習慣について考えてみます。
いまのところ人類の歴史の上でいつ頃、世界のどこで、死者を埋葬する習慣や文化が誕生したのかはよく分からないようです。
ただ、お墓という構築物をつくるより、亡骸を葬る行為(埋葬)が先行するのは確実でしょう。
そして、埋葬というという行為の前提として、亡くなった人を悲しんだり懐かしんだりする気持ちとともに、「死」という現象を理解し、死者を弔うことに何らかの価値や意味を与える抽象的な思考力が必要です。
この抽象的な思考力が社会の中で共有されてはじめて、埋葬という行為やそこから発展したお墓という構造物も生まれたはずです。
そういう点から注目されるのが、フランス南西部のラ・シャペローサン遺跡で発掘されたネアンデルタール人の骨です。
この遺跡は約5万年前のもので、最初の発掘は100年以上前に行われました。
ネアンデルタール人は、約40万年前に出現し、約4万年前に絶滅したとみられている、私たち人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)と同じヒト属の一種です。ネアンデルタール人はホモ・サピエンス・サピエンスの祖先と考えられていたこともありますが、いまは別系統のヒト属であることが分かっています。
ラ・シャペローサン遺跡については、1999年から10年以上かけて再調査が行われ、研究報告によると、人骨が発見された窪地は、少なくとも部分的には墓にするために手が加えられていたことが分かったといいます。
また、同じ洞窟で見つかったトナカイやバイソンの骨と違い、ネアンデルタール人の骨には傷がほとんどなく、風化で摩耗した徴候や、動物に荒らされた様子も見られませんでした。
ネアンデルタール人たちは亡くなった人のために、細心の注意を払って墓穴を掘り、遺体が動物たちに食べられないようにするなど、入念な埋葬の習慣が存在したことが確かめられたというのです。
ネアンデルタール人はまた、自分の身体に顔料を塗って飾り、鳥の羽や貝殻で作った装身具を身に付けていたことが分かっています。
色を認識して顔に塗ったり装身具を作って身に付けたりすることも、ある種の抽象的な思考力がないとできないことであり、死者を埋葬する習慣と符合します。
少なくとも5万年ほど前には、私たちホモ・サピエンス・サピエンスにとってヒト属の先輩であるネアンデルタール人が死者を葬っていたということは、ひとつの起源であることは確かなようです。
※参考
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8645/
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