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仏壇物語(4)仏壇などの相続で注意すべき点は?

2021年3月15日

日本では一般に、亡くなった人を弔うためにお墓とともに仏壇が利用されます。

お墓も仏壇も祭祀(さいし)財産とされ、その相続にはいくつか注意点があります。

今回は、仏壇などの相続について考えてみます。

 

 仏壇や仏具、お墓、神棚などは専門的には「祭祀(さいし)財産」と呼ばれます。

 

さらに法律上、祭祀財産の種類として「系譜」「祭具」「墳墓」の3つがあり、民法897条に次のように規定されています。

 

民法第897

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条(※)の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 

※前条(第896条)

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

「系譜」とは、先祖代々のつながりが描かれた絵図や記録のことです。具体的には、掛け軸や巻物として受け継がれている家系図などが典型です。

「祭具」とは、祭祀が行われる際に使用する器具の総称です。位牌や仏像、神棚などともに仏壇もここに含まれます。なお、建物の一部となっている仏間などは含みません。

「墳墓」とは、亡くなった人の遺体や遺骨が葬られている設備を意味します。お墓のほか墓碑や霊屋(たまや)、敷地の一角を区切った墓地なども含まれるとされています。

 

こうした「祭祀財産」の相続で注意すべき点は2つあります。

第一の点は、誰が相続するのかということです。

 

「祭祀財産」を相続するのは、戦前の旧民法による家制度のもとでは、基本的に長男がなる「戸主」でした。

しかし戦後、家制度が廃止されると、必ずしも長男が承継しなければならないわけではなくなっています。

先ほどの民法897条にあるように、それぞれの地域などの慣習に従って「祭祀の主宰者」が承継するというのが原則です。実際には、相続人の話し合いによるのが一般的です。

また、亡くなった人(被相続人)が遺言で指定している場合はその人が承継しますし、相続人どうしでもめたりしたときは家庭裁判所に決めてもらうことになります。

 

「祭祀財産」の相続で注意すべき第二の点は、相続税がかかるかどうかということです。

 

これについては相続税法において、祭祀財産は課税の対象にならないとしています。

 

相続税法第12
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

一 (略)
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの

(以下略)

 

高級な石材を使ったお墓や豪華な装飾を施した仏壇であっても、それが先祖供養や信仰に用いられるのであれば、個人の財産ではなく親族の共有財産と考えられるからです。

そのため、お墓や仏壇を生前に購入しておけば、相続税が課税される財産を減らすことにつながり、相続税対策になります。

なお、相続が発生した後、葬儀費用(香典返しや初七日の分は含まない)は相続財産から差し引くことができますが、お墓や仏壇を購入したりする費用は差し引けません。その点でも、お墓や仏壇がない人は、生前に準備しておいたほうがいいといえるでしょう。

ただし、資産家の中には純金の仏像や仏具などを相続税対策としてつくるケースもあるようですが、先祖供養や信仰の対象と考えにくいものは、税務署の判断で課税財産として相続税がかかる可能性があります。

 

仏壇など祭祀財産の相続は、あくまで先祖供養などの観点で考えるべきものでしょう。

 

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