世界最大のブラックダイヤモンド「エニグマ」(1)
ダイヤモンドは炭素からできており、無色透明の宝石というイメージがあります。しかし、実際には様々なカラー(色)のダイヤモンドがあり、ブラックダイヤモンドもそのひとつです。2022年には555.5カラット(111.11g)というダイヤモンドとしても世界最大級のブラックダイヤモンドがオークションに出品され話題になりました。その名は「エニグマ(Enigma)」。エニグマとは「謎」という意味で、この神秘的なブラックダイヤモンドにふさわしい名称です。
「エニグマ」は55のファッセトを持つ555.55カラットのカットダイヤモンドとして、サザビーズが2022年2月にロンドンで開いたオークションに出品されました。
落札価格は316万1000ポンド(1ポンド167円として約5億2800万円)だったそうです。
https://www.cnn.co.jp/style/luxury/35182292.html
出品した前の所有者が天然ダイヤモンドとして入手したのは20年ほど前で、もとは推定800カラット(約160g)を超えていました。
「謎」のひとつはなぜ55ファセット、555.55カラットと「5」が並ぶカットになっているかということです。
カットには3年以上がかかっています。ブラックダイヤモンドは一般的なダイヤモンドと結晶構造が異なってさらに硬いため、カットに時間がかかりました。
また、カットするといってもあまりに大きすぎ、指輪はもちろんペンダントやブローチにするのも無理です。
そこで前の所有者は、昔からイスラム教やユダヤ教などで〝邪視〟に対する護符(お守り)として親しまれてきた「ハムサ」を参考にしたといわれます。
「ハムサ」はアラビア語で〝5〟を意味する数字で、5本指のことです。通常、手のひらの形をして中央に目が描かれます。
数字の〝5〟は、イスラム教においては信者の行動規範である「六信五行」の〝5〟や1日のうちに行うべき礼拝の回数の〝5〟に通じます。
ユダヤ教においても〝5〟は「モーセ五書」に通じ、神の摂理を表す神秘的な数字です。
ちなみに「ハムサ」は、聖人の名前にちなんでイスラム教では「ファティマの手」、ユダヤ教では「ミリアムの手」とも呼ばれます。
図表 ハムサの例(チュニジア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Khamsa.jpg
こうした宗教的な伝統や風習を参考に、「エニグマ」は55のファセットを持つ555.55カラットのカットダイヤモンドとなり、ハムサと同じような護符としての意味が与えられているのではないかと思われます。
護符としてのブラックダイヤモンド。
そう考えると、世界最大級の大きさだけでなく、より深い価値があるように感じるのではないでしょうか。
ご遺骨、遺灰からつくるメモリアルダイヤモンドについて
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