天然ダイヤモンドが私たちに届くまで(2) ― マントルでの結晶化 ―
地球上で発見される天然ダイヤモンドの多くは数十億年の昔、地球の深部で長い時間をかけて生まれました。そこからさらに地表にいる私たちのところに届くまでにはいくつものプロセスがありました。
天然ダイヤモンドの長い旅路について、今回はダイヤモンドがマントルでどのように結晶化したのかについてです。
前回も触れましたが、「マントル」とは地球の内部を構成する大きな3つの層のうちのひとつで、いちばん外側の「地殻」と中心の「核(コア)」の間にあります。
図表 地球内部の構造(イメージ)
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/jishin/about_eq.html
「マントル」は具体的には、海洋では表面から約5 kmから7 km、大陸では平均約30 kmから40 kmから始まり、2900㎞の深さまで続きます。
地球の半径は約6300キロなので2900キロはその半分近くあり、そのため「マントル」の体積は地球の約8割を占めています。
「マントル」の正体は「かんらん石」を中心とした「かんらん岩」という岩石=固体です。
天然ダイヤモンドが誕生したのはこの「マントル」のうち、地下100kmより深いところで、いまから10億年よりもっと前、20億年前とか30億年前ではないかと考えられています(ちなみに地球が誕生したのはいまから47億年前)。
なぜそう考えられているのでしょうか。
第一に、地下100㎞より深いところという点です。
これはダイヤモンドを人工合成するHPHT法(High Pressure High Temperature:高圧高温法)からの推測です。
HPHT法では、グラファイトなどの炭素物質に1500℃程度の高温と5GPa(ギガパスカル)の高圧を加えることでダイヤモンドの結晶を成長させます。
「マントル」の中でこれと同じ程度の高温高圧の状態になっているのが地下100 km以上とか150㎞以上の深さのところなのです。
ただし、温度が高すぎると炭素はダイヤモンドにならず石墨(せきぼく)になってしまうので深すぎてもいけません。140kmから250kmあたりがダイヤモンドの生成領域とする説もあります。要は温度と圧力のバランスが重要なのです。
第二に、いまから10億年よりもっと前、20億年前とか30億年前にできたのではないかという点です。
これは、ダイヤモンドのインクルージョン(包有物)などの分析からの推測です。ダイヤモンドが結晶する際、周囲にあったざくろ石(ガーネット)や輝石などのごく小さな結晶が取り込まれて包有物になっていることがあります。
ダイヤモンドは非常に堅い鉱物なので、これらの包有物はマントルにあったときの状態のまま残っていると考えられています。そして、これら包有物の同位体測定によると、いまから20億~30億年前にできたらしいケースがあるというのです。
とはいえ、天然ダイヤモンドには様々な違いやバリエーションがあり、「マントル」のどのくらいの深度でいつ頃できたのかについてはいまなお不明な点が少なくありません。
そのためダイヤモンドは、地質学や鉱物学といった学問分野でも重要な研究対象になっています。
ご遺骨、遺灰からつくるメモリアルダイヤモンドについて
くわしくはライフジェムジャパンのホームページをぜひ、ご覧ください。