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天然ダイヤモンドが私たちに届くまで(3) ―地表まで運んだキンバーライト・マグマ―

2023年4月11日

地球上で発見される天然ダイヤモンドの多くは数十億年の昔、地球の深部で長い時間をかけて生まれました。そこからさらに地表にいる私たちのところに届くまでにはいくつものプロセスがありました。

天然ダイヤモンドの長い旅路について、今回はダイヤモンドがマントルで結晶化した後、地表にまで運んだとされる「キンバ―ライト・マグマ」についてとりあげます。

 

天然ダイヤモンドは地球の深部、「マントル」(前回参照)の100kmあるいは150kmよりさらに深い高温高圧(1000度あるいは1500 度以上でかつ大気圧の50倍以上)の環境で、数十億年前にできたされます。ただ、その深さや時期についてはいまなお多くの謎が残っています。

さらにもうひとつの謎は、地球の奥深くで結晶化したダイヤモンドがどうやって地表にまで運ばれたのかということです。

これについてもかつてはよく分かっていませんでした。ダイヤモンドが発見される場所は地球上でも限られ、またバラバラだったからです。

しかし、20世紀になってそのプロセスがかなり明確になってきました。

「キンバーライト・マグマ」という特殊なマグマがマントルの深いところから高速で上昇し、その途中でダイヤモンドを含む岩石を巻き込んで運んできたというのが現在の定説です。

 

「マグマ」は岩石が溶けた柔らかく粘り気のある溶融体です。一般に地下数十~100km前後のマントルの上層部で生まれ、いったん地下50km程度のところで「マグマ溜り」をつくり、そこからときどき火山噴火によって地表に噴き出します。

これに対して「キンバ―ライト・マグマ」はもっと奥深く、マントルの中でも地表から100km300kmのあたりで数十億年から数億年ほど前、地球全体で多くの火山噴火や大陸の誕生・移動が続いていた頃に生まれ、しかもかなりの高速で地表に噴き出したと考えられています(諸説あるものの1時間から数十時間程度)。

この「キンバ―ライト・マグマ」が噴き出した際、マントルの中で結晶化したダイヤモンドを巻き込み、地表までダイヤモンドを運んだのです。

このプロセスには2つのポイントがあります。

ひとつは、ダイヤモンドが結晶化したのは一般的なマグマができる深さより深く、「キンバ―ライト・マグマ」でなければ運べなかったとういこと。

もうひとつは、高温高圧の環境下で結晶したダイヤモンドは、ゆっくりと地表まで運ばれると途中で黒鉛(グラファイト)に変化してしまいます。上昇スピードの点でも、「キンバ―ライト・マグマ」でなければ運べなかったのです。

 

  • 「キンタ―ライト・マグマ」のイメージ

 

https://www.honda.co.jp/kids/explore/jewelry/

※図中の「超高速マグマ」が「キンバ―ライト・マグマ」。水色の粒がダイヤモンド(イメージ)。

 

 

現在、天然ダイヤモンドのほとんどが、「キンバ―ライト・マグマ」が噴出した跡にあるダイヤモンド鉱山から採掘されています。

こうしたダイヤモンド鉱山は、アフリカ、シベリア、ブラジル、オーストラリア、カナダなど世界中に散らばっていますが、共通するのは古い大陸プレートが残っている場所であるという点です。

 

「キンバ―ライト・マグマ」が噴出した跡はいまでは平らになっていますが、地下はパイプ状になっており、「キンバ―ライト・パイプ」と呼ばれます。

この「キンバ―ライト・パイプ」の中からダイヤモンドが発見されることが分かったのは19世紀の終わりころ、南アフリカ北ケープ州にあるキンバリーで発見されたダイヤモンド鉱山においてでした。

そもそも「キンバ―ライト(キンバリー岩)」というのは、火成岩(溶岩からできる岩石)の一種の名称で、地名の「キンバリー」から名付けられたものです。

つまり、ダイヤモンドを含む岩石(火成岩)が「キンバ―ライト」と名付けられ、この岩石の元となった溶岩が「キンバ―ライト・マグマ」、そしてキンバ―ライト・マグマの噴出した跡が「キンバ―ライト・パイプ」ということで、全てはダイヤモンドが起点となっているのです。

 

なお、「キンバ―ライト・パイプ」であれば必ずダイヤモンドが見つかるというわけではなく、また見つかるとしてもその確率はかなり低いとされます。かつては「キンバ―ライト(キンバリー岩)」が見つかる鉱山というだけで高値取引され、詐欺まがいのケースもあったとされます。

 

「キンバ―ライト・パイプ」のイメージ

https://fukadaken.or.jp/data_pdf/22_99.pdf

 

南アフリカ・キンバリーにあるダイヤモンド鉱山の跡(通称「ビッグホール」

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/96/Open_pit_mine.jpg/1280px-Open_pit_mine.jpg

 

 

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