天然ダイヤモンドが私たちに届くまで(4) ―ダイヤモンドの元となる炭素の由来―
地球上で発見される天然ダイヤモンドの多くは数十億年の昔、地球の深部で長い時間をかけて生まれました。そこからさらに地表にいる私たちのところに届くまでにはいくつものプロセスがありました。天然ダイヤモンドの長い旅路についてまとめてみます。
今回はダイヤモンドのもととなる炭素がどこから来たのかについてです。
ダイヤモンドは炭素(C)どうしが固く結びつき、結晶化してできます。
炭素は水素(H)、ヘリウム(He)、酸素(O)に次いで太陽系においては4番目に多い元素です。
しかし、これらの元素は揮発性が高く、地球が誕生したあと次第に宇宙空間に逃げていったと考えられています。現在、推定されている地球の炭素含有量は0.1%程度です。
そのうち、大気中においては二酸化炭素(CO2)として、また動物や植物などの生物や遺骸(有機物)として、さらに海洋中には炭酸水素イオンとして存在しています(量もこの順番に多い)。
一方、「地殻」やその下の「マントル」は岩石が主体であり、炭素はそれほど多く存在するわけではありません。ただ、ダイヤモンドが生れた数十億年前にはマントルにも一定量の炭素が含まれていたようです。
炭素には原子番号は同じながら、原子核内の中性子の数が異なることからわずかに質量が違う炭素同位体がいくつかあります。そのうち地球では12C(炭素12)と13C(炭素13)が安定同位体として存在しています。
植物など生物は12Cと13Cうち軽い12Cを選択的に取り込むため、地表に存在する炭素の多くは12Cであり、現在は13Cのほぼ100倍存在しています。
ダイヤモンドに含まれる炭素についても12 Cと13Cの比率を調べることが可能であり、それによると発掘場所などによって12Cの比率がほぼ一定のタイプ(P型:かんらん岩型)と比率の幅が広いタイプ(E型:エクロジャイル型)に分けられます。
- ダイヤモンドの炭素同位体比率の例
https://www.gia.edu/JP/gia-news-research-carnegie-carbon-isotope-studies-diamond
この違いについて、P型はもともとマントルに含まれていた炭素に由来するダイヤモンドであり、E型は海洋プレートに堆積した生物由来の炭素に由来するダイヤモンドではないかと考えられています。
P型は原始地球における炭素同位体の比率がマントルにおいて維持されており、E型のほうは炭素の元となる有機物の由来などによって炭素同位体の比率に差が生じているからかもしれません。
なお、E型のダイヤモンドの元となる炭素については、海底に堆積した石灰岩などが海洋プレートともに大陸プレートの下に沈み込み、それがマントルに取り込まれてさらに深く、「核(コア)」との境界まで沈み込んでいった後、「核(コア)」の熱によって再びマントル内を上昇していったのではないかとする説があります。
この過程はおそらく数千万年どころか数億年単位の非常に長いサイクルです。そのサイクルのどこかにおいて、地表から150kmといったダイヤモンドの結晶化にちょうど適した高温高圧の環境でダイヤモンドになったのでしょう。
ダイヤモンドは地球規模、宇宙規模の壮大なスケールのなかで誕生した奇蹟の宝石であるとあらためて感じます。
- 海洋堆積物の循環モデル
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20180814/
ご遺骨、遺灰からつくるメモリアルダイヤモンドについて
くわしくはライフジェムジャパンのホームページをぜひ、ご覧ください。