ダイヤモンドの最新トレンド(4) エシカル・ダイヤモンドへの関心の高まり
天然ダイヤモンドについては以前、密輸入によって地域紛争の資金元になったり、採掘や研磨のプロセスで人権侵害や環境破壊を引き起こしているという指摘がありました。そこで近年、注目されているのが「エシカル・ダイヤモンド」です。
冷戦終結後の1990年代、南アフリカ諸国では政府軍と反政府組織の紛争が広がり、反政府組織がダイヤモンド鉱山を占拠する事件が頻発しました。ダイヤモンドの採掘・売買によって武器購入のための資金を得ることが目的です。
こうした紛争の資金源となるダイヤモンドは「コンフリクト・ダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)」と呼ばれるようになりました。
この問題に対応するため、南アフリカを中心としたアフリカ諸国が2000年5月に南アフリカのキンバリーに集まり、新たな制度について議論を始めました。2001年1月には、世界中のダイヤモンド産業の関係者も会合を開き、新しい組織「ワールド・ダイヤモンド・カウンシル」を立ち上げました。
図表 ワールド・ダイヤモンド・カウンシルのWebサイト
出典:https://www.worlddiamondcouncil.org/
国連もこうした動きをサポートし、2003年ダイヤモンドの原石に原産地証明書を添付する「キンバリー・プロセス証明制度」がスタートしたのです。
この制度により、国際的に取引されるダイヤモンド原石には、紛争ダイヤモンドではない(Conflict-free)という国際証明書を付け、密封した容器で運搬し、またキンバリー・プロセス加盟国以外への輸出入は禁止することになりました。2025年4月現在、日本を含む86の国と地域が参加しています。
図表 キンバリー・プロセス制度のWebサイト
出典:https://www.kimberleyprocess.com/about/what-is-kp
この制度により、世界中のダイヤモンド市場で最大15%程度を占めていた紛争ダイヤモンドは1%以下まで減少したとされます。
一方で、対象となるのは取引ごとのダイヤモンド原石のパッケージであり、その中に紛争ダイヤモンドが紛れ込んでいないかどうかまでは分かりません。また、対象は原石のみであり、研磨・加工といったプロセスは含まれません。
さらに、紛争の資金源という意味では政府軍と反政府組織、両方が関係しますが、規制されるのは反政府組織側のみです。
そのほか、この制度の目的は紛争ダイヤモンドを流通網から排除することであり、そこには違法労働や環境問題の観点は含まれていません。
そこで、キンバリー・プロセス証明制度に加え、より紛争抑止や人権保護、環境保全などのため提唱されるようになったのが「エシカル」(ethical:倫理的)という語を冠した「エシカル・ダイヤモンド」です。
「エシカル・ダイヤモンド」についてはいくつかの国や団体、企業が積極的に取り組んでいます。
例えば、2020年に閉山したオーストラリアのアーガイル鉱山では、水やエネルギーの効率的な利用を促進し、環境や生態系への影響を抑えながら採掘してきました。また、地域貢献の一環として、先住民族の遺産の保護や先住民族の積極的な雇用・教育なども行い、さらに閉山後は埋め戻しなどで環境を元に戻す作業を行っているそうです。
図表 Rio Tintoアーガイル鉱山の紹介サイト
出典:https://riotintojapan.com/operations/648/
「エシカル・ダイヤモンド」においてもう一つ大きなトレンドが、合成ダイヤモンド(ラボグロウン・ダイヤモンド)です。
合成ダイヤモンドは地域紛争の資金源になるおそれがなく、必要なエネルギーや排出される二酸化炭素などは天然ダイヤモンドに比べてはるかに少なく、人権侵害などの心配もありません。
合成ダイヤモンドこそこれからの時代の「エシカル・ダイヤモンド」といえ、若い世代などから支持を集めるようになっているのです。
ご遺骨、遺灰からつくるメモリアルダイヤモンドについて
くわしくはライフジェムジャパンのホームページをぜひ、ご覧ください。